アワビ貼りスプーン 相模国野外育児記~手作り釣具編・手作り道具で魚釣り

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アワビ貼りスプーン
トラウト用のスプーンに、アワビ貝の殻を薄く削りだしたアワビシートを張ったものがあります。

アワビスプーンは市販品にもたくさんあります。バッセルというブランドが非常に有名です。ちょっと値が張ります。ぱっと見で似たようなスプーンは他にも多く販売されています。

アワビシートが釣具屋さんに普通に売られていますので、簡単に自作できます。見た目は市販品ほどきれいにはできませんが、丁寧に作ればかなりのものが作れます。好みのサイズ、色のスプーンが作れます。感覚的には塗装のものよりも釣果が上がる気がします。
自作アワビ貼りスプーン
材料・道具
市販のスプーン \色々
アワビシート \500/枚 (3cmx15cmくらい)
クリアラッカー(セルロースセメントかウレタンフロア) \1,500 /500ml + 専用薄め液
塗装剥離剤 \1,000 /250ml
乾燥台(何でも可)
スプリットリング、フック
製作
中古スプーン
市販のスプーンを用意します。自分で金属板をカットして打ち出し成形して、とやると完璧ですが、専用の工具などが必要になってきそうで未トライです。

最近は中古釣具店が増えてきましたので、\50、\100といった価格でスプーンが手軽に買えます。新品の改造はちょっと勿体無い。

始めに、フックやスプリットリングを全て外します。スプリットリングのつけ外し用に、先端に爪の付いたプライヤーがあると楽です。釣具店に売っています。

元の姿 1個\105
塗装剥離
ホームセンターで買える塗装剥離剤をスプーンの塗装面に塗布します。我家で使用している製品はゼリー状になっています。塗布した部分の塗装がじわじわと浮き上がってきて、ズルリと剥けます。

上の写真のシルバーのスプーンは無塗装でなので、もちろん剥離工程が不要です。

塗装剥離剤
ルアーに限らず市販品の塗装はとても厚く塗られています。その厚さにもよりますが、これがまた非常に気持ちよくツルっと剥けます。

下層に白地、上層にカラーリングの二重塗装がしてあるスプーンが良くあります。このような時は下層の塗装がなかなかしつこい時があり、何度か塗布を繰り返す必要があることもあります。

アワビシートは少し光を通すので、下地がわずかに見えます。下地に白の塗装をし、その上にアワビシートを貼ると、マイルドな仕上がりが期待できます。

また光沢の強いシルバーやゴールドの金地に貼ると、シャープな感じに見えます。中古スプーンには塗装の下が錆びたものがあり、そのままアワビをはると、意外と透けて見えることがあるので、要注意です。錆びていたら耐水ペーパーなどで削り落としておきます。

半分だけ剥がしたところ

全部剥がしたところ
所々錆びてました
アワビシート貼り
スプーンの形状に合わせてアワビシートをカットし、裸のスプーンに貼り付けます。シートの裏がのり付きシールになっていることが多いです。

アワビ面はメッシュ状に細かくカットされているので曲面にも貼り付きますが、あまりRがきつい曲面の場合は、アワビシートが皺になってしまうことがありますので、慎重に貼り付けます。皺が出来ると完成時の美しさが完全に失われます。コーティングではほとんど皺はカバーされません。どうしても皺が出来る場合は、シートをいくつかに分けて張るか、皺の幅分の切れ込みを入れます。

前後の端のスプリットリングをつける部分は、シートを貼らないほうがスプリットリングを付けやすく、きれいに仕上がります。また、スプーンの縁の部分も気持内側に入るくらい小さめにカットしたほうが、完成時に縁がギザギザにならず、きれいな気がします。

好みに応じて裏面にも貼ります。市販アワビスプーンの裏面は金属面のままのことが多いですが、これの裏面もアワビにしたいというのがそもそもの自作の動機です。下から水面方向をうかがうトラウトには、スプーンの表面しか見えないのかもしれません。或いは、裏面の金属光沢に効果があるのかもしれません。いろいろ作って比較してみるのが良いと思います。

アワビシート


裁断と貼り付け
塗装
セルロースセメントのクリアラッカーで全体をコートし、仕上げます。刷毛塗りやスプレーだと、刷毛の毛が残ったり、気泡が入り易かったり、湿気が多いときに白濁したりすることがありますので、できれば大瓶入りのラッカーにどぶ漬けし、引き上げます。ウッドミノーなどは木質内の空気抜きにどぶ漬けを行いますが、スプーンならあまり気にしなくてもさほど問題ないかもしれません。

セルロースの他にウレタンフロアも使われます。セルロースで下地を作り、ウレタンで仕上げるというのがセオリーのようで、厚い塗装が早く出来ますが、時間が経過すると透明度が落ち、やや強度に劣ると聞いたことがあり、我家では仕上げまで含めてセルロースセメントを使う機会の方が多いです。ウレタンの方はぼってりした感じに仕上がり、セルロースはすっきりした感じがあります。シリコンを使ったラッカーもあります。

どぶ漬け用の大瓶入りラッカーは大きな釣具店で売っています。模型屋さんなどにもあるかもしれません。そのままどぶ漬け出来るように、ブリキ缶や広口ガラスビンに入っています。

セルロースセメントやウレタンフロアの溶剤(シンナー)は乾燥速度が速く、気化時に表面にでこぼこを作り、白濁の原因を作ることがあるそうです。また高湿度時には白濁する可能性が高くなるそうです。これを防ぐ(乾燥速度を落とす)ためのリターダー(白化防止剤)という液体が売られています。私自身はそれほど白濁で困ったことはありませんが、買っておくと良いかもしれません。セルロースセメントやウレタンフロアに数%の割合で混合して使います。

瓶入り・缶入りのセルロースセメントやウレタンフロアは、溶剤が徐々に揮発してだんだんと濃厚になってきます。遅かれ早かれ必要になるので、購入時に専用のうすめ液(シンナー)を一緒に購入したほうが良いと思います。うすめ液は油性塗料用、アクリル塗料用、セルロースセメント用、ウレタンフロア用などと専用品が別々に売られています。成分の違いは良く分かりませんが、流用はしないほうがいいと思います。

500ml缶入り
セルロースセメント

500ml広口ビン入り
ウレタンフロア

小瓶入りリターダー
乾燥
乾燥まで数時間以上かかりますが、どぶ漬けと乾燥を数回繰り返し、塗膜を重ねてなるべく強くきれいに仕上げます。

乾燥時は、塗装面になにも触れないように適当なものにぶら下げますが、我家では写真のようなダンボール製簡易乾燥台を使っています。簡易すぎますがこれで十分です。携帯電話の箱くらいのダンボール箱をカットし、上部に針金を2本縒って渡します。そこに、針金のS字フックを引っ掛けます。渡し綱を縒ったのは、S字フックが横滑りしないためです。

乾燥中に未固化のラッカーは重力で下に集まり、始めは大きなしずくの塊が垂れます。乾燥が進みスプーンから離れる前に固化してしまうと困りますので、ティッシュのこよりなどで、固まり始める前に最下部のしずくをこまめに除去します。またなるべく均等に塗装したいので、塗装&乾燥のたびに上下を入れ替えてぶら下げます。

ラッカーの有機溶剤は可燃性で有毒ですので、火気や換気には十分気を配ります。居間や寝室で乾燥するのは避けた方が良いと思います。かなり臭いがキツイので、家人を敵に回さないよう注意を払います。



ダンボールの乾燥台
仕上げ
最後の塗装が乾燥したら、スプリットリングとフックを付けます。

中古屋さんのルアーのフックは、太すぎたり、針先がなまっていたり、また錆びかけのものがあったりしますので、この機会に性能の良い新品に付け替えると良いと思います。

完成。

完成
感想
シートを貼るだけの簡単自作ですが、買ったままのスプーンとは釣れたときのうれしさがちょっとだけ違います。手順も簡単なので、全行程を子供にやってもらっても大丈夫です。

元々、エリア用の極小アワビスプーンがあまり売られていない気がしたのも自作のきっかけです。今ではエリア用アワビスプーンもたくさん見つかります。

オーロラシートとかレインボーシートなどの名前で人工の光沢シートが売られています。これらでもきれいに光るスプーンが作れます。但し模様や光沢が全面均一なので心地よいゆらぎが感じられず、やはり天然のアワビの妖しい光り方にはかないません。この人間の感覚が魚と同じかどうかはわかりません。







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