ウッドミノー 相模国野外育児記~手作り釣具編・手作り道具で魚釣り

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ウッドミノー
手作り釣具は、フライタイイングからバンブーロッド、カーボンブランク、アルミ削り出しのフライリールなど特にフライフィッシングでは果てしなく奥が深いですが、ウッドミノーはかなり手間がかかるものの我々素人でも手が出せて且つ製作欲を満たせるボリュームのある手作り趣味の分野です。

釣りに行く時間やその他の遊びでじっくりミノーを作る機会がなかなかなく、全く上達しませんが、非常に幅広く奥の深い趣味なので、集中力のある人にはお勧めです。

今回は、リップやセンターフックのないレイクトローリング用のミノーを作成します。
自作ウッドミノー
材料・道具
  • バルサ材の板  5mm厚程度
  • 厚紙
  • ステンレスワイヤ 0.7mm程度
  • 板おもり、ガン玉など

  • ミニルーター + ルーター用丸のこ
  • 水性マジック
  • 研磨用耐水ペーバー各番手
  • クリアラッカー(セルロースセメント)、シンナー
  • 瞬間接着剤

  • アルミ箔
  • 平やすりなどの、アルミの模様付け
  • 穴あけポンチ
  • 研磨用耐水ペーバー各番手
  • エアブラシ、エアコンプレッサー
  • アクリル系カラーリング塗料、シンナー
  • 市販のルアー用目玉
  • 瞬間接着剤
  • 2液式エポキシ接着剤(速乾性が良い)
製作

バルサ材の切り出し

初めに、厚紙に型抜き用の側面図を描き、型を作成します。小魚の写真などから写しても良いですが、市販のミノーをモデルにすると綺麗に描けます。

バルサ材に型を当て、外周をトレースして型を写します。後の工程でアルミ箔の切り出しにも使いますので紙型は捨てずに取っておきます。

次に型を切り出していきますが、柔らかい木ですので、カッターなどでも切れます。私はミニルーターと小さな丸のこビットを使って、一気にざくざく切っていきます。簡単に割れたり折れたりしますので、特に細い部分は注意します。


接合部分のマーク
切り出した型の2枚を貼り合わせて作成していきますが、切り出した後、接合面の外周に水性マジックで色を塗っておきます。貼り合わせて削っていっても、中心線が分かるようにするためです。幅広めにつけておいたほうが良いです。


仮貼り合わせ
一旦外形を削りだす為に、仮貼り合わせをします。接合面の前と後の2箇所に、小さくきった両面テープをはり、2枚を貼り付けます。

両面テープが小さすぎるとずれたり剥がれたりする恐れもありますが、大きすぎると後で一旦分離するときにバルサが割れる可能性がありますので程ほどにします。

バルサ材

切り出し後、
接合部分に色づけ

仮張り合わせ

外形成形
カッターや荒めのサンドペーパーで外形を成形していきます。簡単に削れてしまいますが、あまり大胆に削ると取り返しが付かなくなりますので、繊細且つ慎重に行います。万が一削りすぎた場合は、一回り小さくしたり細身にしたりと設計変更すれば、無駄が省けます。

成形後、ウェイトとワイヤを入れるために一旦2枚を剥がします。割れないよう慎重に、薄いカッターなどを接合面に入れて両面テープ部分を剥がします。

ウェイト用溝の位置決めと、溝掘り
フローティングでもシンキングでも、バランスと浮力調整のためにウェイト(おもり)を入れます。前後、上下のバランスが良くなるようにサイズ、形、位置を決定しますが、スイムテストするまで良否は分からないので、同じモデルを使って試行錯誤が必要です。左右が同位置になるように注意して位置とサイズを決めます。

我家では板おもりを折って束ね、左右両側に入れることが多いですが、丸い溝の真ん中ににガン玉を入れても良いと思います。

位置とサイズを決めてマークし、ウェイトを入れる穴を彫刻刀で掘ります。深く掘りすぎて貫通させないように注意します。

ワイヤ作成
前後の2箇所と、腹側のフックがある場合は計3箇所のアイは、1本のステンレスワイヤを使って、ボディー内で一体のワイヤを通して作ります。

アイは、ステンレスワイヤを精密ドライバのような細い心棒に巻き、ラジオペンチで元を絞って丸く成形します。アイの位置がちょうど良くなるように注意して長さとカーブを決めます。

ここで一旦ワイヤを片面上に置き、もう一方をきちんと乗せて押し付けます。すると、バルサがくぼんで、ワイヤの位置がバルサ上に付きます。これを目安に、V型の彫刻刀で、ワイヤの溝を掘ります。

仕上げ成形
ウェイト、ワイヤをそれぞれの溝にきちんとはめ、両面を合わせます。これ以降、両面が分離することはありません。あわせた後、アイの部分から瞬間接着剤を流し込みます。これで両面が接合されます。

塗装前の最後の仕上げ成形を行います。フォルムの最終調整、接合面の段差の研磨、瞬間接着剤のざらざら研磨のために、サンドペーパーで表面を削っていきます。これ以降形を変えることはできませんので、じっくりと且つやり過ぎずに、磨きを入れていきます。

外形の成形




ウェイトの位置決め




ワイヤの作成




成形完了


これで成形が完了し、あとは塗装工程に入ります。バルサは柔らかく成形が簡単なので、貝スプーンなどに比べると圧倒的に楽です。ここまででざっと半日あれば終わります。但し塗装は逆に圧倒的に時間が掛かります。

下地塗装

柔らかいバルサ材の強化のために、厚い塗膜を張ります。セルロースセメントでもウレタンフレアでもどちらでも構わないようですが、透明感と硬度はセルロースの方が上のようです。セルロースは、塗膜を厚くするのに塗装回数と時間がかなり必要です。

缶や広口ビンなどに入れたセルロースセメントにどぶ漬けし、乾燥させますが、最初のどぶ漬けの時に少し時間をおいておくと、バルサ材表面の気泡が抜けて綺麗に仕上がります。

室温にもよると思いますが、乾燥時間は5-6時間程度取り、どぶ漬けと乾燥の繰り返しを10回くらい繰り返します。ちょっと回数が多めかもしれませんが、土日に切り出しと成形を行い平日の朝晩に漬けて乾燥させると、次の休日までに10回くらい塗装できます。最後の塗装後は丸一日乾燥させ、次の工程に入る前に、800-1000番くらいのサンドペーパーで磨き、小さな凸凹を均しておきます。

下地塗装


アルミ箔貼り

箔の切り出しと形付け
アルミ箔を適当な大きさ(2枚で左右からボディーを挟む)の短冊に2枚切り出し、ウロコ模様をつけます。金属の平やすりに乗せて、ボンドなどについているプラスチックのへらでこすりつけると、やすりの縞々が転写されます。細かく綺麗な模様を移すにはやすりが一番ですが、台所のザルでもなんでもウロコ風になりそうなものは試して見る価値はあります。

バルサの切り出しに使った紙型でアルミ箔を切り抜きます。側面のカーブを考慮してやや型より大きめに切ります。切り抜いた箔をボディーに乗せて押し付け、ボディー側面カーブの形を付けていきます。

貼り付け
片面づつ、アルミ箔を貼ります。セルロースセメントの白濁を抑えるリターダーという添加用溶剤を、絵筆などでボディの半面にごく薄く塗りつけます。表面のセルロースが少し溶けて、アルミ箔との接着剤になります。すばやくアルミ箔を乗せ、位置を微調整します。位置を確定したら、ボディのカーブに合わせてアルミ箔を押し付け、接着します。しわが出来ますが、なるべく側面にはしわが出来ないようにこすり付けて空気を出します。上面、下面の中心線上はアルミ箔が無いボディー部分ができますが、後で塗装する部分ですので気にしません。

試しに、青物釣りのバケ作りなどに使う乾燥魚皮や、市販のレーザーシールも使ってみました。シールはにせものっぽさが増します。魚皮の方はさすがに本物の魚皮ですが、極めて地味に見えました。アルミか下地塗装の上に貼るといいかもしれません。

側線模様
少し乾燥させてアルミが動かなくなったら、ルレット(柄の先にギザギザ歯車が付いた裁縫用具)や鉄筆などで側線を付けます。使う道具によってかなり風合いが変ります。キリなどでぽつぽつと小さな穴を開けてもいいです。

アルミ箔が重なった部分や、前後のアイまではみ出した部分は切り落とします。小一時間ほど乾かしたら、上下をひっくり返して2回、セルロースでどぶ漬けします。

ウロコ模様付け

箔の形付け

貼り付け完了

上・魚皮
下・レーザーシール

顔面アルミ貼り
顔面部分には、ウロコ模様の付いていないツルツルのアルミを重ね貼りします。口先からエラまでの顔面型を左右側面分2枚切り出し、ボディー部と同様に形を付け、リターダーで貼り付けます。焼き物用などで売られている厚めの箔を使うと、皺が出にくく立体感が出ます。

数十分乾燥させ顔面が固定されたら、エラ、口などの顔面模様をキリの先やカッターナイフなどで書き込んでいきます。小魚としてのリアルさが増す大事な工程ですので慎重に行います。力が入ると顔面アルミが剥がれます。

再度2-3回どぶ漬けします。

目の穴あけ

カラーリングの前に、目玉を入れる穴を開けます。目は、ラパラのように直接書いてもいいですが、釣具屋さんで買える立体目玉を付けると生きて見えます。

サイズの合ったよく切れるポンチを押し付けて、セルロース膜とアルミ箔に丸い切れ込みを入れます。切れた表皮とアルミ箔をはがし、目の穴を浅く掘ります。小さな彫刻刀でもできますが、小さな砥石のついたルータビットが綺麗に掘れます。目玉は少し飛び出ているほうがリアルなので、深すぎないようにします。

あけた穴に低粘度の瞬間接着剤(ゼリー状ではない普通の)をたらし、簡易水止めします。

カラーリング塗装
模型用のアクリル塗料などで、お腹を白系、背中を黒系で塗装します。色は何でも構いませんが、はっきりとした色使いの方が綺麗に見えます。絵筆で塗っても良いですが、エアブラシがあると、特に色の境目が自然な仕上がりになります。まあなくても何とかなると思います。

エアブラシで、手芸用のメッシュ布地などを使って背中の黒地にウロコ模様を入れたり、パーマーク(ヤマメ・アマゴや、サケ類の稚魚・パーの側面にある楕円形の模様)やヒレを薄く刷いたりすると、グッとそれらしくなります。

スプレー塗料でも出来ますが、スプレーのツブが大きいのでムラが出来たり液だれしたりしないよう注意が必要です。

目玉入れ
いよいよ開眼式を行います。速乾性の2液式エポキシ接着剤を目玉の穴に少量たらし、穴埋め+接着剤とします。市販のハンドメイドルアー用の魚眼を穴に被せます。エポキシ接着剤がはみ出したり周りにつかないように注意します。エポキシ接着剤が固化する時間が経過したら、最終塗装に入ります。

最終塗装
最後の皮膜形成塗装を行います。再度セルロースで保護膜を形成します。しつこくやっても構いませんが、弱いバルサの強化塗装はできていますので、表面のカラー塗装が保護できる皮膜でOKです。

顔面箔貼り

目の穴あけ

塗装

エアブラシと
エアコンプレッサー

目玉入れ
完成
2~3回ディッピングし乾燥させます。前後のアイにセルロースが固まりついている場合は、カッターなどで削り落とします。作業工程で凸凹などが出来ていたりしたら、カッターで削り落とすなり研ぎ落すなりして修正します。必要なら更にディッピングします。

最後の皮膜塗装はしっかり乾燥させます。後のアイにフックを取り付けたら完成です。

渓流魚ではなくカタクチイワシ風になりました。市販品の綺麗さにははるかに及びませんが、皺のよった肌具合も本物の小魚を彷彿させる気がしてきます。
      

完成
感想
ウッドルアーは、削りだしや研磨に時間のかかる無垢貝ルアーに比べても、はるかに時間とコストがかかるハンドメイドルアーです。始めは興味津々の子供たちも、長い長い戦いの最後までは付き合ってくれません。

同じデザインで4匹同時に作ると、見た目の出来が良いのが内1匹、泳ぎが良いのが1匹という感じです。16匹作ると両方良いのが1匹出来る計算です。

ウッドベイトなど市販の優れたルアーにはかないませんが、トローリングでそこそこ釣れるルアーが出来るようになってきました。

優れた見本を見ながら作成していくと、自分の予想よりはましなものが作れる気がしますが、もっと綺麗に作ろうと思えばいくらでも凝ることが出来ます。ルアーとして実釣に耐えるかどうかの大きなポイントであるウェイトバランス等は、見た目ではわかりません。本当にまともなものを作ろうと思えばずっと大変で奥の深い趣味といえます。
自作ミノーで子ニジマス

市販品の手作りミノー、ウッドベイト








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