夜光貝スプーン 相模国野外育児記~手作り釣具編・手作り道具で魚釣り

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夜光貝スプーン
奄美諸島や南西諸島に産する夜光貝を削りだしたスプーンです。レイクトローリングでは角スプーンと並んで定番ルアーとして有名です。

夜光貝はさざえの巨大版といった形の巻貝で、我家では奄美大島から通販で仕入れました。でかい貝で、食べても旨いそうです。貝殻は厚く均一な真珠層で出来ていて、ギラギラしたアワビなどと違った高級感のあるスプーンが作れます。

この厚い貝殻は非常に固く、グラインダーやルーターなど電動工具にダイヤモンドカッター、ダイヤモンドサンダーを使用して、大変な苦労をかけて切り出し磨き上げます。子供にも工具を扱うことは出来ますが、力やコツが必要で危険も伴いますので、小さな子にはお勧めはしません。主に最終研磨工程などを手伝ってもらいます。
夜光貝スプーン
材料・道具
  • 夜光貝 小さなもので \2,000位から。ネットで仕入れます。
  • 真鍮金属管 3.0mmx0.5mmx1m(外径3mm,内径2mm) \210

  • ディスクグラインダー + 固定治具
  • ミニルーター + フレキシブルシャフト
  • ダイヤモンドカッター、ダイヤモンドサンダー、ダイヤモンドビット、ルーター用丸のこ
       (仕上げ研磨工程を除き、ダイヤモンド以外は歯が立たない感じです)
  • 研磨用耐水ペーバー各番手
  • 研磨剤(品名ピカールなど)
  • 粉塵対策用マスク、ゴーグル
  • クリアラッカー
製作
夜光貝の切り出し
貝殻にマジックで目安を書き込み、大雑把に切り出します。渦巻き方向に沿って、スプーン一枚づつが取れる長方形の短冊形断片に切り離します。ダイヤモンドカッターを付けたグラインダーが一番効率よく切れます。

このとき、キビナゴ筋と呼ばれる模様が取れる、貝殻の渦巻きのカド部分に当たるところが、断片の長軸方向の真ん中に来るように切り出します。キビナゴ筋は、スプーンになったときにその背から一筋の光を放つ重要な部分です。キビナゴ筋が入っていないところもルアーが作れますので、それぞれの出来上がりのサイズも意識して大小取り混ぜ無駄なく切り出します。


夜光貝

夜光貝を切断する際に、騒音と共に大量の粉塵が飛びます。この粉塵を吸い込むと、人体に有害だそうです。広い庭でもあるといいのですが、大きな音もでますので、隣近所に迷惑がかからない環境はなかなか難しいと思います。そこで、我家ではお風呂場で作業を行いました。後で風呂中を洗えば、簡単にきれいさっぱり出来ます。

なお粉塵を吸い込まないために、また目を保護するため、粉塵対策用マスクとゴーグルを必ず着用します。ホームセンターで売っているものでOKです。また手袋も必須です。

安全めがね(ゴーグル)
と防塵マスク

外形切り出し
切り出した短冊形断片に、マジックでスプーンの外形を書き込みます。厚さなども考えて、ルアーの前後の方向を決めます。

マジックの線に沿ってディスクグラインダーとダイヤモンドカッターで、おおよその形を切り出していきます。研磨で成形するのはかなり大変なので、カットの時点でなるべく目標のシルエットに近づけたほうが良いと思います。

外形成形
ディスクグラインダーのダイヤモンドカッターやダイヤモンドサンダーで外形を整形し、また表面を削って厚さを調整していきます。成形のコツは、とにかくハイパワーの工具とダイヤモンドで一気に削ることです。スプーンの裏側の掘り込みはディスクグラインダーでは難しいと思いますが、外側のシルエットはパワーのあるグラインダーで削るのが一番早いです。

ディスクグラインダーは重量があって、また強力なトルクの反動がかかってきますので、できればグラインダー側を固定し、そこに貝を当てて削ったほうが安全です。手持ち式の工具を固定する治具はホームセンターで見つけました。固定式の研磨機があれば問題ないと思います。右の写真では、1x6材の板に治具をネジ止めし、ディスクグラインダを固定しています。

外形の切り出し


ディスクグラインダーと
固定治具


掘り込み・仕上げ成形
市販のスプーンを参考にしながら、スプーンの前後の幅と、湾曲の深さやカーブをイメージして、両面から削っていきます。厚い貝をスプーンに適当な厚みまで削っていき、ちょうど良い厚さに調整する工程は、非常に時間が掛かる根気の要る作業ですが、それだけに完成形が見えてきたときのヨロコビはひとしおです。

ミニルーターと小さなダイヤモンドサンダーなどを使用しますが、このときにも粉塵が出ます。またサンダーが熱を持つと研磨面の劣化が早いので、やはりお風呂場で、切断箇所・研磨箇所に水をたらしながら作業します。

水をかけると粉塵が舞うのを抑えられますが、工具に水がかかって漏電・故障する危険性もありますので、注意が必要です。また貝を手に持って切断するときは、カッターが回転方向にクルッと滑って指を切断しないように十分注意します。バイスやクランプなどで貝が固定されるように工夫して、手には持たずに作業したほうが良いかもしれません。

ルーターは、電池式のような簡易タイプではほとんど貝に歯が立ちませんので、できれば100V式の高速でパワフルなものを使用します。右の写真のようにミニルーターに延長フレキシブルシャフトをつなぎ、ストラップでルーターを首にかけて使っています。水にも濡れず、手に重量がかからないので安全で、かなり便利です

ミニルーターと
延長シャフト


ダイヤモンドカッター、
サンダー、
各種ミニルータービット
アイの加工
大まかな研磨まで終わったら、スプリットリングを取り付けるための穴をダイヤモンドビットで前後に開けます。真鍮管がちょうど入る程度の大きさにします。キリ状のダイヤモンドビットを押し付けるとすぐに開きます。

真鍮管を通し、穴に瞬間接着剤をたらします。スプーンの表面近くで真鍮管をカットし、はみ出した部分を研磨します。真鍮管をカットする際には、出来れば水をたらしながら、迅速に行います。真鍮管が熱を持つと瞬間接着剤が焼けて、真鍮管が抜けてしまうからです。ミニルーターの丸のこかダイヤモンドカッターが切りやすいです。はみ出した部分の磨き落しも水をかけながら行います。

真鍮管をスプーンにつけた状態でカットしにくい場合は、真鍮管を先に短く輪切りにカットしておき、その後穴に入れ接着してもOKです。はみ出した分は磨き落とせばOKです。

穴の位置があまり中に入りすぎると、最後にスプリットリングが通せなくなりますので要注意です。また端に近すぎると割れてしまう可能性もあります。割れたとしても、少し小さくなりますが、もう一度外周を成形して作り直します。特に虎の子のキビナゴ筋入りのものは捨てるわけには行きません。

成形、穴あけ完了

アイの加工
仕上げ
ダイヤモンドサンダーで全体を研磨し、成形時に生じたでこぼこを無くします。

耐水ペーパで水をかけながら、小さい番手から順に目を細かくしていき、研磨していきます。

最後に金属の光沢出しなどに使われる研磨剤等で表面を研磨し、きれいなつやを出します。耐水ペーパー仕上げの時点とは随分変わります。

塗装
何度かクリアラッカーにどぶ漬けし、乾燥させます。我家ではセルロースセメントを使用しています。

ラッカー塗装により光沢が増し、逆に虹色だった色合いが単純になる感じがします。真珠の虹色の輝きは、多層になった真珠層の各層から反射される光の干渉色だそうですが、多分貝殻の輝きもこれと同じで、クリアラッカー層が下層の干渉光を弱めてしまうのか、屈折率を変えてしまうのかもしれません。

よってラッカーを塗らなくても十分きれいに光っていますが、貝面保護や変質防止のために塗ったほうが良いのではないかと思います。
クリアラッカー仕上げはこちら

金属研磨剤・ピカール

磨き完了
完成
スプリットリングを前後に付け、後方にフックをつければ完成です。ふー。

完成
感想
トラウトに効き目抜群のルアーです。キビナゴ筋の入ったやつはいかにも水中では小魚に見えていそうです。もっとも、小魚に見えて食いついているのか、光と動きに反応して反射的に噛み付いているのかは分かりません。極端に小さなものは作れませんが、湖のトラウト、特に大物が期待できるトローリングには最適で、我家の定番ルアーになっています。

1個の貝から、小さいものなら十個前後のスプーンが作れますので、大小取り混ぜて作っておくと便利です。但し、キビナゴ筋入りの上級品はやはり数個しか作れません。使うときは筋入り品から使っていきますので、最後には筋無しが幾つも残ってしまって、また次の製作に取り掛かってしまいます。切り出すときはついついたくさん作ることを考えてしまいますが、使わないものを増やしてもしかたがないので、まずはキビナゴ筋入りをいかに上手に切り出して作るかを考えたほうが得策です。

しかし夜光貝の硬さと粉塵には全く閉口します。とにかく怪我をしないよう注意が必要です。上述の通り、粉塵・騒音・危険対策が必須です。最大限の注意をはらって作業します。子供に手伝ってもらうのは主に危険の少ない研磨工程になります。子供と一緒にがこのサイトのテーマなんですが、とても根気がいるのでなかなか最後まで付き合ってくれません。

アワビ貝なども同じ様な工程で作れます。こちらは元々貝殻が薄いので、切り出しと研磨の工程は少し楽です。小さな貝では、パール層にたどり着く前の汚い表面部分が残ってしまうこともありますが、夜光貝はまず大丈夫です。







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